「すももの作文」(佐原太一郎編)

「すももの作文」(佐原太一郎編)

「誰かわたいの家族になるナリっ」
突然事務所ですももが言い出した

事務所にいた面々が、一人残らずワケのわからんといった顔、あるいはリアクションを取る

事の起こりは数時間前の小学校
すももが国語の授業を受けている時間まで遡る

授業の内容は作文
そしてそのテーマは『わたしの家族』だった

そのテーマが出てきた時点で、該当者はじじぃしかいない

作文のエピソードには事欠かない人物だが、それを正直に書いたら物笑いのタネになる事は容易に想像できる
その証拠に、隣の席のすももの家庭事情を良く知る田村君が、テーマが発表されてからというもの、こっちを見てニヤニヤと薄笑いを浮かべている

田村君に関しては、落ちた消しゴムを拾うふりをして当身を食らわせ、沈黙させたからいいとしても、じじぃに関してはそうは行かない
当たり障りの無い事で文章を構築しようとしても、じじぃの一挙一動が当たり障りで構成されているため、生命維持に必要な『食事』『睡眠』『呼吸』といった事実しか浮かんでこない

そこですももの考えた策が、事務所の誰かを家族の一員にデッチ上げようというものだった
そして、この作文は次の国語の時間までの宿題となり、その結果が冒頭の発言になる

すももが以上のことを説明すると、事務所の面々はようやく納得したようだ
「ああ、あの人が家族じゃなぁ・・・」
などと、同情的な声も上がる

と、言うワケで、すももの作文の矛先に上がったのは所長だった

「え?俺?
いや、別にいいけど、書くことなんかなんにも無いと思うぜ」

「かまわないナリよ
喰う寝る息するしか書けないじじぃに比べたら、まだまだ書くことがあるナリよ」

「ふーん
そんなもんかねぇ・・・」

「で、俺は何をすればいいんだ?」

「普通に仕事してればいいナリよ
明日は日曜だから、退勤時間までわたいががっちょりと密着取材してるなり」

「了解
勝手にしてくれ」

そして次の日、すももの密着取材が始まる
そして、所長に密着し、3時間が過ぎた頃

「所長」

「ん?」

「ん?じゃないナリよ
なにか仕事はしないナリか?」

一向に探偵らしい仕事をしない所長に苛立った声で言うすもも

「んー?
仕事ならしてるぞ
情報収集ってやつだ」
手に持っていた新聞をひらひらとさせ、読んでいることをアピールする

「日付が4日前になってるナリが、それで情報を収集しているナリか?」

「あ、ホントだ
なかなか目の付け所がシャープだな」
不敵にコメントする所長

すももは常々所長は毎日ヒマそうにしていると思っていたが、この日の密着取材により、実際にヒマだったということが良くわかった

結局すももは、喰う寝る息するだけを書いたじじぃの作文を提出したという




「すももの作文」 了



2003/11/10(公開12/25)

文章:しろじろ〜

編集:しろじろ〜






戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送