第25話「鳥居の除去」

第25話
「鳥居の除去」

1 鳥居の除去 2003/07/12 03:47:20
発言者 : 工事関係者 --- ---
空港拡張のため鳥居を移動させたいのですが、いざ移動させようとすると、関係者が謎の事故にあうんです
何とかならないでしょうか?


2 承りました 2003/07/12 03:57:06
発言者 : 佐原太一郎 --- ---
了解です
派遣するものが決まり次第連絡しますよ

さて、誰が行く?


3 俺に任せろ! 2003/09/22 00:58:26
発言者 : midas --- ---
この工事、必ず成功させてみせる!(鶴嘴を持ちながら)


4 これって工事なのか?・・・まぁいいや 2003/09/22 03:39:57
発言者 : 佐原太一郎 --- ---
ジンクスに支配されない人種はこういう時に使えるなぁ
んじゃ、この件は全面的に任せたよ







と言う訳で、鶴嘴を片手に現場に到着したmidas
現場には古びた木製の鳥居があった

「この鳥居なんですが、壊そうとするたびに何らかのトラブルが起こるんですよ」
工事現場の現場監督者が、midasに説明する

見たところ、問題の鳥居は古いだけでこれといった特徴が無いように思える
midasの腕力ならば、たちどころに壊れてしまいそうである

「なるほどな・・・・・・
まぁ、任せておけ」

midasは鶴嘴を両手に構える
野球のスイングの要領で振りかぶり、鳥居に一撃をかまさんとしたその時、背後から不意に声がかかった

「若いの、ちょっと待ってもらっていいかの?」

見ると、狩衣・衣冠といった神主のいでたちをした老人がいた

「ん?あんたは確か・・・・・・」

「おう、ワシじゃワシじゃ、隣のジジイじゃよ」

事務所の隣で神社を営む、桃内龍鳳その人だった

「で、なんの用事でここにいるんだ?」

「いやの、事務所で『鳥居』という単語が聞こえたから、ちょいと気になってついて来たんじゃよ
それよりも、これをただ壊すとえらい事になるぞ」

「なに?」

「この奥で神様がの、壊させまいとしておるんじゃよ」

「神がだぁ!?
貧乏神じゃあるまいし、なんで神がそんなロクでも無いことをするんだ」

突然現れ、突拍子の無いことを言い出したジジイにmidasは問う

「それはの、これをただ壊すともっとロクでもないことが起きるからじゃ」

「どういう事だ?」

「鳥居というものはの、異世界との境目なんじゃ
境目が壊れると、魑魅魍魎の類が一気に押し寄せるゾイ」

「あんたの言っている事はまわりくどくてよく分からんのだが」

「ふむ
じゃあ、説明するより実際来てもらった方が早いようじゃの」

じじいはそう言うと、midasの腕を引っ張り、鳥居に向かって歩き出した
midasが引っ張られるままに鳥居をくぐると、いきなり世界が急変した


「ここは?」

「神様の世界、『高天原(たかまがはら)』じゃよ
ただし、長いこときちんと奉られなかったせいで、かなり歪んでいるようじゃがな」

ジジイはそう言った後、周囲に目を向け、言う

「ほれ、早速歓迎されておるようじゃぞ」

複数の異形の存在が、midasらを伺っている

「4・・・5・・・6か・・・」
midasが低くつぶやき、同時に走り出す

そして、有無も言わさず異形の者の胸板に、正面からドロップキックをぶちかまし、3匹の悪魔を道連れにその場に倒れる
直撃を受けた悪魔は、その時点で虫の息である

midasはいきり立って向かってくる悪魔を鶴嘴で迎撃する
一匹、また一匹と、高天原から黄泉の国へと確実に送り込む

手にした鶴嘴がすっかり血に染まった時、戦闘は終わっていた

「ふん、もろいやつらだ」

「ふむ
なかなかやりおるわい」

傍観を決め込んでいたじじいがそう評する

「で、この騒ぎの元凶はどこに居やがるんだ?」

ジジイにmidasが問う

「さあのう
まぁ、迷った時はまっすぐ行けば何とかなるもんじゃぞ」

「そういうものなのか」

「そういうものじゃて」

何も考えてない口調で、何も考えてない発言をするジジイ
だが、結果的にはそれで正しかった

途中、何度か悪魔の襲来があったが、それらを難なく迎撃して歩いていくと、正面にお宮のようなものが見えてきた

「ほら、合ってたじゃろ?」

「ふむ」

「さぁさ、行くぞえ」

足取りも軽くお宮に向かうジジイ

「ああ」

midasは生返事をしてそれに続く




入り口の大きな鳥居をくぐり、お宮に入る
お宮の規模は比較的小さく、その辺にある小さな神社とさほど変わらない規模である

お宮の中は暗く、明かりの類もなかったが、奥に何者かが座っていた
暗くてよくは見えないが、それは一見人のように見える
だが、一般的な『人』と決定的に違うのは、その何かが黄色い牛の頭だったという事か

「ナニモノダ・・・」
牛頭の悪魔はmidasたちに問う
何かを抑えているかのように呼吸は荒い
目は血走り、今にも襲い掛かってくるように見える

「ワシらはな、オヌシに話があって来たんじゃよ」
ジジイが答える

「ホウ・・・ハナシ トハ ナンダ?」

「この場所からお移りいただけないものかと思っての」

ジジイのその言葉を聞いた牛頭の悪魔はいきり立つ

「人間ノ分際デ コノ牛頭大王様ニ 指図スルカァッ!!」

おおよそ交渉らしき交渉をする以前に、交渉が決裂してしまった

「駄目だこりゃ
midas、逃げるぞ」

ジジイがmidasのほうに目をやると、midasも立ち上がり、受けて立つ気満々といった様子である

「やめろmidas
無理じゃて」

「あん!?
話して判らんやつに何を語るというんだ
拳で語るまでよ」

と、言い終わった直後、midasは胸に牛頭天王の蹴りを受け、お宮の外まで吹き飛んだ
牛頭天王が放った蹴りは、奇しくもここに来た直後、midasが異形の悪魔に放ったドロップキックだった
牛頭天王とmidasは、勢いのままにお宮の外まで吹っ飛ぶ

「やれやれ、とんだ荒神じゃわい」
人事のようにつぶやくジジイだった

midasは牛頭天王の蹴りが何事もなかったかのように立ち上がり、近くにあった大八車を持ち上げ、牛頭天王の脳天に振り下ろす
牛頭天王は脳震盪を起こしたようにふらふらする

そこにすかさず飛び上がり、胸の位置に両足で蹴りをぶちかます
派手に吹き飛ぶ牛頭天王
それを追いかけるmidas

牛頭天王も負けずに立ち上がり、走ってくるmidasの勢いを利用してくの字に曲げた腕をのどに振り下ろす
まともに食らったmidasは、その場に倒れる

倒れているmidasに牛頭天王が両膝を突き刺すように降ってくる
身をよじって回避を試みるも、完全には回避できなかったmidas
だが、それによってバランスを崩した牛頭天王もまた、その場に倒れた

組み合いになる二人
牛頭天王が上で、midasが下にいる
不利な体勢の中、midasは牛頭天王の鼻っ柱に頭突きをぶちかます
これはなかなか効いたようで、牛頭天王が鼻を押さえて悶絶する

ここでmidasが立ち上がり、そのまま倒れこむように肘打ちをかける

双方ともに、鼻血と返り血で血まみれになっていた

お互い仁王立ちになりながら呼吸を整え、再度組み付こうとした刹那、midasの視界にジジイが入っていた
ジジイは懐から何かを取り出すと、牛頭天王に向ける
ジジイの手が光った後、少し離れた場所にいる牛頭天王の頭部が揺らいだ
牛頭天王は頭を抑え、ほんの短い時間ふらふらした後その場に倒れ、起き上がることはなかった

「ふう、手間かけさせてくれるわい」
手にごつい銃を持ったじじいがそうつぶやく

「おい、じいさん
こいつは殺したらまずいんじゃなかったのか?」

「ふむ、そんな事もあったかのぅ」
すっとぼけた口調でジジイが言う

「嘘を言っていたのか?」
midasの言葉に怒気が混じる

「嘘を言ったつもりはないぞ
ただな……」

「ただ……何だ?」

「説得するのが面倒になったんじゃよ
カッカッカッ」
大笑いするジジイ

「はあ!?」

「いやな、考えてもみんかい
このままオヌシとこの馬が戦って、話し合いが成立したかと思うか?」
ジジイは牛頭天王に蹴りをいれながら言う

「いや・・・そうは思わんが」

「じゃろ
だからワシは一番合理的な方法を取っただけなんじゃよ」

「あ、ん?・・・ああ・・・」
ジジイの釈然としない回答に、言うべき言葉が出てこないmidas

「だが、こいつはあっちの世界にバケモノが出てくるのを守ってたんじゃないのか?」

「なぁに、そんなもん、ワシらが駆逐してしまえばいいじゃろ
こんな奴が出来てたんなら、ワシらにだってできるわい」

「そういうモンなのか?」

「まあの
ま、たとえ違ってたとしても、もう殺ってしまった事は事実だしの
だが少なくとも、この牛より強烈なのが出てくることは無かろうて」

「ううむ……そういうものなのか……」
あくまでも釈然としないmidas
うまくジジイの口車に乗せられたような気がするが、嘘を言っているわけでもないんで怒る口実も無い
釈然としまいままに釈然としない事をやらされる様な気がするmidasだった

かくして、この歪んだ高天原で、本来ならやる必要も無かった悪魔駆除が始まってしまったのである




「行ったぞ」

「おうっ!」

ジジイが白刃を煌めかせ、悪魔を追い立てる
midasが悪魔の行く手をさえぎり、鶴嘴で確実に絶命させる

こんなことを、かれこれ3時間は続けていた

「キリがねえな」

「肉体労働は年寄りには応えるわい」
肉体労働をする羽目になったのは自分のせいだと言うことを知ってか知らずかジジイが言う

2人は、牛頭天王亡き後の、歪んだ高天原に押し寄せる悪魔を片付けているのである

「また来たぞ」
midasが新手の悪魔を見つけ、ジジイに向かって叫ぶ

「わかったわい」
少々嫌そうにジジイが応える

出てくる悪魔は決して強くは無いんだが、出ては現れ倒しては現れる
そして、一気に出るわけでもなく、少数だが途切れなく現れる
休む暇もなく現れるので、精神的にも肉体的にも負担が大きい

結局、これが一段楽するまで2時間、総合で5時間かかったという

「もうイヤじゃ
なんでワシがこんな目にあわなくちゃならんのじゃ」

ジジイは本気で泣きが入っていた
もちろん自分のせいである

「もう終わりだろ……帰るぞ」

ジジイを引きずるようにして現世(うつせみ)へと戻るmidas
現世では、もう鳥居撤去を阻むものは誰もいなかった

「それじゃ、へし折るぞ」

midasは鶴嘴を両手に構える
野球のスイングの要領で振りかぶり、鳥居に一撃を加えると、木製の鳥居はあっけなく砕けた

「終わったの」
感慨深げにジジイが言う

「ああ……、終わったな」
midasがうなずく

「終わったナリね」
すももも続く

「!?」

いつの間にか隣にいたすももに驚く2人

「すもも!?どうしてここに?」

「色々あるナリっ」
返答を避けるすもも
実はジジイが現れたあたりから居たんだが、ピンチになった時を見計らい、高いところから颯爽と助けに現れるという計画でいたのである
が、二人とも全然ピンチにならず登場しそこなっていた模様である
カッコ悪くて言うにも言えない

かくして、鳥居の撤去作業は終了した
精神的にも肉体的にも堪えた仕事であったという




第25話「鳥居の除去」
━終━



2004/2/25

原案協力:おがで

文章:しろじろ〜




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