第27話「廃工場の悪魔」

第27話
「廃工場の悪魔」

サポート役を一人派遣してくれないだろうか 2004/02/02 06:31:20
発言者 : 霧雨縁 --- ---
廃工場で悪魔退治を依頼されたんだが、悪魔の数が尋常じゃないようだ
一人で何とかならないようなので、誰か派遣して欲しい


ふむ 2004/02/02 07:15:22
発言者 : 佐原太一郎 --- ---
了解、イキのいいのが揃ってるよ
さて、誰が行く?


イキが良いといえば・・・ 2004/02/04 13:20:23
発言者 : ユイチェン --- ---
筋肉脳の出番ですわよねぇ(横目で見ながら)


激しく横目見 2004/02/04 21:15:49
発言者 : 佐原太一郎 --- ---
筋肉脳か・・・・・・
いるなぁそんな奴


事務所でお茶を飲みながら 2004/02/05 00:51:05
発言者 : エンシン@筋肉脳 --- ---
そうそう筋肉脳ねぇ(と言って後ろを見る)
・・・って俺かい!


馬鹿を眺めつつ 2004/02/05 00:52:43
発言者 : 佐原太一郎 --- ---
はい、お一人様ご案内〜っと
良かったな、好き放題暴れられて


クスクス 2004/02/05 21:24:36
発言者 : ユイチェン --- ---
自覚があるって素晴らしいわネ(にっこり)
先日実家から送られてきた怪しげな軟膏を試すんだから
それなりに・・・
がんばってらっしゃい


決定事項 2004/02/18 00:15:59
発言者 : 佐原太一郎 --- ---
よし、決まりだな
ちゅうかユイチェン、君も行ってくれ
霧雨君が依頼するって事はよっぽどすごい量の悪魔が居るんだろうからな



「で、経緯とかはどういうモンだかは調査してあるのか?」

ここは工業区域の一角の町工場
これから行うべき仕事の現場である
そして、依頼主たる霧雨縁を前にしてエンシンが状況を尋ねた

「そこは調べてある
まず・・・・・・」

霧雨女史が一息置いてから説明を始める

「ここは元々は歯車の工場で、さまざまな大きさの歯車を製造していたらしい
バブルの頃は儲かっていたらしいが、不況のあおりでどんどん経営は悪化
社長の身内が次々と謎の死を遂げ、保険金で一時持ち直すも、経営は改善せず倒産
社長は工場内で首を吊って死んでいたそうだ
その後さまざまな憶測を呼び、ついには幽霊を見たという目撃談も飛び出し、倒産から数年たってなお、好条件にもかかわらずいまだに買い手がつかないそうだ
そして、最初の段階では単なる噂だったものが、最近実体化し」

そう言って縁は上部の窓を指差す
明かりが無い筈なのに、何かの影が揺らいでいる
耳をすますと、大量の何かが蠢く音すら聞こえてくる

「・・・この有様らしい」

「それで、ワタシたちは具体的に何を目的として動けばいいのデスか?」
今度はユイチェンが尋ねる

「そうだな・・・
具体的には、現在の状況の調査と原因の排除だ
必要とあれば、社長の一族の死も調べる必要があるかもしれないな」

「うし、要件はわかった
んじゃあ、行くか」

「ああ、そうしよう
鍵が裏口のものしかないので、裏口から行く事になる
武器の準備はいいか?」

「おうよ」
「いいデスわよ」

全員思い思いの武器を持って答える
この場にいるもの皆怖気づくとかいう感情とは無縁らしい

それを確認すると縁は裏口の鍵を開け、工場へと踏み込んだ




工場に一歩踏み込んだ時、独特の感覚に包まれる
異界化特有の違和感
その感覚が、自分たちが今戦場に踏み込んだという事を告げてくる

「それで、霧雨サン?」

「うん?」

「ここに一度入った事はあるんデスよね
その時の様子はどうだったんデスの」

「そうだな、とにかく攻撃的な悪魔が多・・・」

突然、ブンッと、エンシンの剣が一閃する
それによって、悪魔数体がまとめて肉片へと変わる

「こんな風に悪魔が多いってわけなんだな」

「ああ、そういう事だ」

何事も無かったかのようにさらりと言う縁
こんな調子で工場内を進んでゆく事は想像に難くない

「とりあえず、事務室を目指そう
何か原因があるとして、事務室が一番手がかりがありそうだ」

「ああ」「そうデスわね」

縁の提案により、事務所を目指す
特にあてがあるわけではないので、二人はそれに従う
縁とエンシンだけではてこずっただろうが、ユイチェンのCOMPもあって、比較的楽に事務室まで到達できた

「確かにこれは一人じゃあ厳しいわな」
事務所に入るなりエンシンが言う

楽に到達できたとは言っても、襲い掛かってくる悪魔の絶対数は多いので、あくまでも”比較的”である

「お、金庫見っけ
開けていいか?」

「ああ、そういう事は依頼人から承諾済みだ
開くんだったら開けてくれ
・・・鍵は無いがな」

「うあっ、めんどいなぁおい」

「ワタシはなにをしたらいいんデスの?」

「手がかりになりそうな書類を探してくれ
この異界化が悪魔との契約に基づくものだったなら、契約書が存在する筈だ」

こうして、手がかり探しが始まり、おおよそ1時間が経過した

「開かねぇぇっ!」

黙々と金庫の破壊作業をしていたエンシンが吼える

「うるさいデスわね
もう飽きたんデスの?」

「飽きたも飽きた
こんなもん、バールのようなものでもなきゃ開かねぇっちゅうの」

そう言って、金庫を担いで事務室の外まで出て行った

「?」

ユイチェンはわざわざ悪魔の跋扈する室外まで行く訳を図りかねたが、その理由はすぐにわかった
外から聞こえる大きな銃声
銃声の後「邪魔すんなダボがぁぁっ」との下品な罵倒

しばらく外でドタバタする音が聞こえてきたが、ふいに静かになる

「ふぃー・・・なかなか根性のある金庫だ」

エンシンがそう言いながら、少しへこんだ金庫を担いで戻ってきた
ショットガンをもってしても開かなかったらしい

「しゃあないな、剣でこじ開けるか」

「ん?エンシン
どうしたんですの?」

「あ?
俺ァどうもしてねぇぞ」

「アナタじゃありませんワ
ワタシのエンシンです」

「紛らわしいな
いい加減その名前なんとかしろよ」

縁が二人の会話を聞いて不思議そうにしている
エンシンが事情を説明しようと口を開いた時、ユイチェンが言う

「隠し金庫デスわっ!」

二人とも一斉にユイチェンのほうを見る

額縁の色あせた絵をどけた場所の壁に、金庫が埋め込まれていた

「よくわかったな、そんなモン」

感心したようにエンシンは言う

「この子のお陰デスわ」
エンシンの頭をなでて言うユイチェン

「この子が急に額縁のところに行って、ガリガリし始めたんデスの
エンシンは人間のエンシンよりいい仕事しマスわね」

「ふーん・・・このクソ生物がねぇ・・・」

エンシンの言葉に「フー」という威嚇音で応じるエンシン
縁は二人のやり取りで、事情察したらしく、中断していた書類探しを続行し始めた

「じゃ、それぶっ壊すのは任せた
俺はこっちを壊すので忙しいからな」

「薄情な人デスわね
それじゃあ、ちょっとこれ借りマスわよ」
ユイチェンは承諾ではなく、確認するために言う
たとえダメと言っても借りるのだろう
無造作に転がっていたエンシンの剣をつかむと、突きの体勢で勢いよく走り出す
金庫の隙間に正確に突き刺すと、手を離し垂直に跳躍し、剣の柄を横から蹴り飛ばす
ばきっという音と共に金庫の蓋が鈍く開く

「ざっとこんなところデスわ」

「人の剣で何をしやがるかっ」

「だって、自分のでやったら壊れるじゃないデスか」

「・・・・・・・」
とっさに返す言葉が出ず、酸欠の金魚のように口をパクパクさせながら抗議するエンシン
ユイチェンはそんなエンシンを見なかった事にして、金庫の中を確認する

「ほら、怪しい書類が出てきましたワよ」

エンシンはもちろん、縁も作業を止めてユイチェンのほうを見る
ユイチェンの手には日本語ではない文字で書かれた一枚の契約書があった

「ヘブライ語か・・・
やはりここの元社長が原因だったんだな」

ヘブライ語で書かれた契約書の一番下に、漢字で書かれた社長の名と黒ずんだ拇印があり、それが必要以上に違和感を醸し出していた

「それで、その契約書には何と書いてあるんだ?」

エンシンは遠慮なくずけずけと質問する

「それはわからない」

「はぁ!?」

エンシンは、予想外の返答に力いっぱい疑問符を撒き散らす
だが、考えてみると、現代日本ではヘブライ語が達者な人物の方が稀有なものであるのだが

「だが、時間があれば何とかなる
今から解読するので、しばらく待ってもらおう」

そう言うと縁は、カバンから辞書を取り出し契約書を翻訳し始めた

「また地味な事を始めたなぁ、おい」

人事なのに露骨に嫌そうな顔えおするエンシン

「調査というものは、すべからく地味なものだ」

辞書から目を離さずに切り返す縁
このあたりに余裕が見え隠れする

「ワタシのCOMPに翻訳ソフトが入っていますわ
今まで使った事が無いんで忘れていマシタが」

銃型COMPをいじりながらユイチェンが言う
さっきから発言が無かったのは、この機能を使うために試行錯誤していたからである

「ほほー、便利なもんだな
だが、最後に勝つのは筋肉だ、覚えとけ」

言っては見たが、縁とユイチェンに見事に無視されるエンシン

「……聞けよ、おい」

「ん?何か言いマシタか?」

「……いや、もういい……」

エンシンが諦めにも似た発言をすると、興味が無いように視線をCOMPに戻す
(いや、実際興味が無いんだが)


そして、エンシンを置き去りにしたまま数分が経過し、直訳ではあるが翻訳が完了した


契約書
契約者の魂と引き換えに
契約者の窮地を3度まで救う
なお、途中解約は不可能である

回りくどく書いてはあるが、要約するとその4行に収縮させられる

「いかにもな契約書デスわね」

「ああ、そうだな
それで、最後にはすべてを失うお決まりのコースだ」

「で、今はその失ったものを悪魔が得たっちゅうコトだな」

「そういう事だな
……だが……」

「だが?」

「この契約書は無効だ」

「契約書が無効だ?」
エンシンが縁の言葉を鸚鵡返しに繰り返す

「そうだ
今回の依頼人から聞いていたが、契約者が危機を脱したのは2度だという事だ
共に資金繰りの苦しい時、保険金をかけた家族が死んでいる」

「なにか別な危機を乗り切ったんじゃないのか?」

「それはないな
この契約書に、印が2箇所ついているだろう」

縁が指し示した場所には確かに2箇所印がついている

「ああ、そう言う事デスのね」

家がそういう仕事をしているユイチェンにはすぐにわかった

「ん?これがどうかしたのか?」

「エンシンさんも鈍い人デスわネ
これは契約を行った証デスわ
それで、この印が2つしかついていないと言う事は、最後まで契約が行われなかったと言うことに他ならないんデスの」

「じゃあ、この契約書は無効じゃねぇか」

「だからさっきからそう言ってるでショ!」

バカのエンシンに偏頭痛がしてくるのを感じながらユイチェンが吼える

「えー、ちょっと話を聞いてもらえないか?」

二人の漫才を黙って傍観していた縁が口を開く

「ん、ああ」「ハイですの」

「これからの行動指針なんだが・・・
「契約対象の悪魔を倒すか、契約者を発見して最後の契約をさせる
以上の2つの解決方法がある」

「契約者は自殺したんじゃないんデスの?
それに、最後の願いとは何デスの?」」

「ああ
だから、正確には契約者の魂だな
そして、この男に最後の契約を行わせる」

「どういう契約なんだ?」

「それはわからない
だが、『窮地を救う』という内容と、『契約者の魂と引き換え』という内容を考えれば、地獄へ落ちるのだろうな」

「ハァ!?
地獄に落ちるのに救済かよ」

「少なくとも、現状よりはましだろう
天国にも地獄にも行けず、輪廻さえも許されないまま、現世でただただ苦しみ続ける
男が地獄に行く事になれば、悪魔だってこんな場所に留まる必要はなくなる」

「そういう事デスか・・・」

「でも、この方法は男を探し出さねばならない
室外の悪魔の量を見れば、悠長に探している暇などあるかどうかなどわからない」

「でも、やらなきゃいけないんだろ?」

「ああ、そういう事だ
少なくとも、どちらかができればいいはずだ」

「わかりましたワ
それじゃあ、行きまショウか」

「ああ、あてはないがな・・・」

こうして3人は悪魔の襲撃から守られていた部屋を出た




エンシン&ユイチェン編へ続く
霧雨縁編へ続く



第27話「廃工場の悪魔」
━終━

2004/5/31

文章:しろじろ〜




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